会社売却を考え始めた。
でも、何から手をつければいいのか。
まずはアドバイザーに相談? 財務を整理? 事業計画を作り直す?
やるべきことは無数にあるように見える。
でも、その前に 一つだけ知っておいてほしいことがあります。
会社売却の価格を決めるのは、 数字だけではないということ。
会社売却のプロセスで 最も重要なのに、 最も見落とされていること。
それは「内的企業価値」です。
財務指標、成長率、市場ポジション。 これらは当然見られます。
でも、買い手が最終的に見ているのは もっと深いところ。
経営者の判断精度。 組織が自律的に動くかどうか。 意思決定の速度。
同じ売上、同じ利益率の2社でも、 売却価格が倍以上違うことがある。
その差をつくっているのが、 数字の外にある企業価値── 内的企業価値です。
160億円規模のM&Aに関わった経験から、 この構造は確信を持って言えます。
会社売却を考え始めた今、 知っておくべきなのは 財務の整え方ではなく、 この構造です。
- 会社売却の価格は財務指標だけで決まらない
- 「内的企業価値」が評価の分かれ目になる
- 買い手は「買った後も回るか」を見ている
- 経営者依存度の高い会社はリスクとして割引される
- 内的企業価値の準備は売却交渉前に始めるべき
同じ数字なのに評価が分かれた2社
ある案件で、 似た規模の2社を比較する場面がありました。
A社。売上8億円。営業利益率12%。 B社。売上7.5億円。営業利益率13%。
数字だけ見れば、大きな差はない。 むしろB社のほうが利益率は高い。
でも結果は、 A社がEBITDA倍率8倍で評価され、 B社は5倍に留まった。
差額にして約3億円。
何が違ったか。
A社は、経営者が静かだった。
質問に対する回答が構造的。 判断の根拠が明確。 組織が自律的に動いていた。
「この会社は、 経営者が交代しても回るだろう」
買い手はそう判断した。
B社は、経営者が忙しかった。
すべてに経営者が絡んでいた。 判断が属人的で、 経営者がいないと止まる構造だった。
「この会社は、 経営者が抜けたら回らないかもしれない」
そのリスクが、 倍率として反映された。
数字は同じでも、 構造が違えば評価は変わる。
これが会社売却の現実です。
買い手が本当に見ていること
会社売却の場面で、 買い手は何を見ているか。
デューデリジェンス(DD)では 財務・法務・税務が調査されます。
でも、最終的な判断を左右するのは それだけではありません。
買い手が本当に見ているのは 三つのこと。
一つ目。 この会社は「回る」か。
経営者がいなくても業務が回るか。 属人的な部分はどれくらいか。 組織の仕組み化はできているか。
二つ目。 この会社は「伸びる」か。
市場の成長性だけではなく、 変化に対応できる組織かどうか。 意思決定の速度はどうか。
三つ目。 この経営者は「信頼できる」か。
判断が一貫しているか。 数字の説明に整合性があるか。 人として信頼できるか。
一つ目と二つ目は仕組みの問題。 三つ目は経営者の状態の問題。
三つとも、 財務諸表には載っていません。
でも、売却価格を最も大きく左右するのは この三つです。
売却前に整えるべきこと
会社売却を考え始めたなら、 財務の整理と並行して やっておくべきことがあります。
属人性を下げる。
「自分がいないと回らない」部分を棚卸しする。 その部分を仕組みに変える。 判断基準を明文化する。
これは売却のためだけではない。 経営の質を上げることそのもの。
意思決定の構造を見える化する。
どの判断を誰がしているか。 判断にどれくらい時間がかかっているか。 判断の根拠は何か。
これが見える化されている会社は、 買い手からの信頼度が格段に高い。
経営者自身の状態を整える。
疲弊した状態で売却交渉に臨んでも、 良い結果は出にくい。
判断が速く、 説明が構造的で、 余裕がある経営者。
それだけで、 相手の印象は大きく変わります。
会社売却は、 交渉テクニックではなく 構造の準備で決まる。
その準備は、 今日から始められます。
会社売却の準備を観察する
- 自分がいないと止まる業務をリストアップする
- 主要な意思決定に自分が何割関わっているか確認する
- 組織が自律的に動いている部分と、属人的な部分を比較する
- 「買い手の目線」で自社を見たとき、何が気になるか書き出す
会社売却は、 会社の一つのゴールかもしれない。
でも、そのゴールの質を決めるのは 数字だけではありません。
経営者の判断精度。 組織の自律性。 内的企業価値。
これらが整っている会社は、 数字以上の評価を受ける。
あなたの会社の 「数字の外にある価値」は、 今どんな状態ですか。