企業価値はいくらなのか。
M&Aを検討しているとき。 資金調達を考えているとき。 事業承継の準備をしているとき。
「うちの会社の値段」を 知りたくなる瞬間がある。
調べてみると、 DCF法、類似会社比較法、純資産法。
計算方法がいくつもあって、 それぞれ数字が違う。
どれが正しいのか。 どれを使えばいいのか。
実は、もっと重要なことがあります。
計算で出る数字は「目安」であり、 実際の企業価値を決めるのは 計算式の外にあるもの。
企業価値の計算には、 大きく3つのアプローチがあります。
インカムアプローチ(DCF法など)。 将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く。 「この会社は将来いくら稼ぐか」で評価。
マーケットアプローチ(類似会社比較法など)。 似た会社の評価倍率を当てはめる。 「同業他社はどう評価されているか」で評価。
コストアプローチ(純資産法など)。 資産と負債の差額を基準にする。 「この会社を今つくるといくらか」で評価。
どの方法も合理的であり、 それぞれに適した場面がある。
でも、プロの世界では常識として 知られていることがあります。
同じ計算方法を使っても、 前提の置き方で結果は大きく変わる。
そして、前提の置き方に影響するのは、 数字の外にある要素。
経営者の判断精度。 組織の自律性。 事業の属人性。
五次元経営ではこれを 「内的企業価値」と呼んでいます。
計算方法を知ることは入口。 内的企業価値を知ることが本質です。
- 企業価値の計算には3つの主要アプローチがある
- DCF法は将来キャッシュフロー、類似会社比較法は市場評価、純資産法は資産ベース
- 同じ計算方法でも前提の置き方で結果は大きく変わる
- 前提に影響するのは数字の外にある「内的企業価値」
- 計算方法は入口、内的企業価値が評価の本質を左右する
3つの計算方法の概要
それぞれの計算方法を もう少し具体的に見てみましょう。
DCF法(Discounted Cash Flow)。
将来5年〜10年のキャッシュフローを予測し、 割引率で現在価値に変換する。
メリット: 会社の将来性を反映できる。 最も理論的とされる。
デメリット: 予測の前提次第で結果が大きく変わる。 成長率を1%変えるだけで 企業価値が数億円動くことも。
類似会社比較法(マルチプル法)。
同業の上場企業の EV/EBITDA倍率やPER等を参考に算出。
メリット: 市場の「相場観」を反映できる。 計算がシンプルでわかりやすい。
デメリット: 完全に同じ会社はないため、 「どの会社を参考にするか」で結果が変わる。
純資産法(コストアプローチ)。
貸借対照表の資産を時価評価し、 負債を差し引く。
メリット: 客観的で検証しやすい。 特に不動産やIP等の資産が多い会社に有効。
デメリット: 将来の収益力が反映されない。 成長企業の評価には不向き。
実際のM&Aでは、 複数の方法を組み合わせて レンジ(幅)を出すのが一般的です。
計算結果が「正解」ではない理由
企業価値の計算結果を見て、 「うちの会社は○億円」と 安心するのは早い。
なぜか。
計算結果は前提に依存するから。
DCF法で言えば──
将来の売上成長率を年5%と置くか、 3%と置くかで、結果は大きく変わる。
割引率を8%にするか12%にするかで、 数億円の差が出る。
これらの前提を 何で決めるのか。
結局、判断です。
「この会社は成長するだろう」と思えば 成長率は高く置かれる。
「この経営者なら実行できるだろう」と思えば リスクは低く見積もられる。
つまり、計算の前提に 「信頼」が入り込む。
買い手がこの会社を信頼するかどうか。 経営者を信頼するかどうか。
信頼されれば前提は楽観的に置かれ、 企業価値は高く出る。
信頼されなければ前提は保守的に置かれ、 企業価値は低く出る。
計算方法は同じでも、 信頼の有無で結果が変わる。
この「信頼」こそが、 内的企業価値の正体です。
内的企業価値が計算を超える
企業価値の計算方法を理解したうえで、 もう一段深い視点を持つ。
それが内的企業価値です。
内的企業価値とは、 数字には直接表れないが 企業価値を根本から左右する要素。
具体的には三つ。
経営者の判断精度。
判断が速く的確な経営者の会社は、 将来予測の信頼度が高い。 結果としてDCFの前提が楽観的に置かれる。
組織の自律性。
経営者がいなくても回る会社は、 買い手にとってリスクが低い。 リスクが低ければ割引率が下がり、 企業価値は上がる。
事業の仕組み化。
属人的な営業力に依存している会社と、 仕組みで売上が立つ会社。 後者のほうが将来のキャッシュフローは安定的。
この三つが整っていると、 どの計算方法を使っても 結果が高く出やすい。
逆に言えば、 この三つが整っていなければ、 どれだけ財務を飾っても 本質的な企業価値は上がらない。
企業価値の計算を学ぶことは大切。
でも、計算の結果を高めたいなら、 計算式の中ではなく 計算式の外を整えること。
それが内的企業価値の考え方です。
企業価値の構造を観察する
- 自社の売上・利益の推移を見て、成長率のトレンドを確認する
- 「この成長率は信頼されるか」を買い手の目線で考えてみる
- 経営者依存度──自分がいなくても回る度合いを10段階で評価する
- 内的企業価値(判断精度・自律性・仕組み化)の現在地を感じてみる
企業価値の計算方法は、 知っておくべき知識です。
DCF法、類似会社比較法、純資産法。 それぞれの特徴を理解する。
でも、もう一歩踏み込んで 知っておいてほしい。
計算で出る数字は目安であり、 本当の企業価値を決めるのは 数字の外にあるということ。
あなたの会社の 内的企業価値は今、 どんな状態ですか。